DJ男爵はお気に入りの椅子に足を組んで腰掛け、何かに感心しきった表情で本を読んでいた。
タイトルには、『死ぬことと見つけたり』、とある。
ファンキーの度合いが過ぎるアフロ頭が、至極真面目な顔をして読書に励んでいる姿というのは、それだけで酷く奇異な印象を与えるものだが、果たしてそれを常時ハイテンションな彼女が見逃す筈もなかった。
「あっらー、ぬしさんが読書とは珍しいじゃんねー。何それ春画?」
「し、失敬な!お嬢さん、我輩を誰だと思っているのかね」
「ええと、スケベ大王」
「誰がスケベ大王か!我が名はDJ男爵だ!!勤勉なる我輩は今回より同盟を組んだ他の紳士たちについて少しでも理解を深めるべく、彼らの名前に関係ありそうな資料を取り寄せ、精読している所なのだよ」
ウカ、なんというかとんでもなく長い髪の毛が全身に巻きついているとしか形容しようのない少女、がDJの後ろから覗き込んでみたところでは、確かにそれはスケベ本や漫画や、或いは漢字の使われていない絵本などではなく、れっきとした小説のようであった訳だが。
「ふーん、まあ珍しいこともあるじゃんねー。これは今期ももうお終いかも分からんじゃんね」
「早っ!というかどんだけだと思われているのだ、我輩は・・・」
「ほんで、それはどっちさんについての本じゃんね?」
「うむ、これはどうやらブシドーについての本のようだな・・・我が旧友であるところの某仮面の男は、ことのほかブシドーが好きなようでな。我輩がブシドーについて知りたいと言ったら、山のような本を貸して寄越した」
「へーえ。でもあん人の生き方には、あんまし反映されてなかったみたいじゃんね」
「そ、それはまあ、確かにな。ちなみにニートについての文献も要求したところ、彼は『しししし、新聞でも読めばいいのではないかなっ!』という暖かいアドバイスとともに何故かそそくさと去っていってしまったな」
「あの人も職業不詳だけんねー…もしかすると痛い所だったんかもしれんね」
男爵とウカは、暫しあの変態について思いを馳せた。
が・・・
「あ、あんまりあん人の存在を示唆すると、またぞろゲスト出演からの常駐を狙ってきそうだから、とりあえず存在自体を記憶から抹消した方が良さそうじゃんね」
「そ、そうだな、今期は我らの舞台なのだからな・・・何を言っているのか分からない人がほとんどだと思うし」
「で、話を元に戻してと。ブシドーについては何か分かったんかね?」
「うむ・・・奴はなかなかに恐ろしげな存在やもしれん。ここを見てくれ」
男爵は本に何箇所かはさんであるメモックの中から一つを選び、ページを開いた。
「まあこの本はブシドーについて実に多くの示唆に満ちているものなのだが、中でも今回我輩が注目したのはここだ」
次回DJ男爵武士道についてかく語りき、に続く未定
PR